ダウの犬と子犬はどっちが手数料がお得か?日米銘柄で徹底比較

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2019年7月に最低手数料が見直され、マネックス証券、SBI証券、楽天証券のネット証券大手3社の米株最低手数料が廃止となりました。それに伴い記事内の手数料とそれを用いた計算結果を見直ししています。

日本だと値上がり益(キャピタル・ゲイン)を狙う方に着目しがちですが、欧米ではインカム・ゲインで資産を築く方が一般的で、高配当の株を保有して配当・利子収入(インカム・ゲイン)を狙う『ダウの犬手法』という株の買い方があります。

オーソドックスな投資手法ですが、特別な知識・経験が無くてもできるおすすめの投資手法です。

日・米の株式で『ダウの犬』と『ダウの子犬』をSBI証券で購入するときの手数料を徹底比較します。

『ダウの犬銘柄』って何?

米国版の本家『ダウの犬』はダウ工業株30種がベース

ダウというのは、ダウ・ジョーンズ・インデックスの算出に使用され「ダウ工業株30種平均」のことです。「ダウ平均」と省略されることもあります。以前はニューヨーク証券取引所(NYSE)の上場企業のみだったので、また「ニューヨーク・ダウ」、「ニューヨーク平均株価」などと呼ばれることもありますが、現在ではNASDAQ上場企業も含まれています。アップル、アメックス、シェブロン、J&J、コカ・コーラなど、そうそうたる顔ぶれです。

ダウ工業株30種のうち、高配当の株10銘柄を『ダウの犬銘柄』と呼びます。高配当であるということは株価が低迷していると捉えることもできるので、配当と値上がり益の両方を狙う一石二鳥の戦略です。

日本版『ダウの犬』はTOPIX core30がベース

日本株で『ダウの犬手法』を用いる場合は、「TOPIX core30」を用いるのが一般的です。

「TOPIX core30」はTOPIXニューインデックスシリーズの中の一つで、東証一部に上場する全ての銘柄の中で特に流動性と時価総額が高い超大型株30銘柄を抜粋したものです。

「TOPIX core30」は、東証一部市場における「核(Core)」の役割を果たす超大型の有名企業が名を連ねることから、特に重要視されています。

『ダウの子犬』って?

『ダウの子犬銘柄』というのもあります。『ダウの犬銘柄』10社の中で株価が安い5銘柄をピックアップしたものを『ダウの子犬銘柄』といいます。

『ダウの犬銘柄』の投資プロセス

毎年12月31日(最終営業日)に以下のプロセスを繰り返すだけの投資法です。

米国株ならダウ工業株30種、日本株ならTOPIX core30を用いる
配当利回りの高いトップ10銘柄をピックアップ
ピックアップした10銘柄、全て同じ金額で購入
翌年まで1年間保有

米国版の『ダウの犬』『ダウの子犬』の比較

2019年5月17日時点の『ダウの犬』『ダウの子犬』をピックアップする際は、以下のサイトを利用しています。
DOGS OF THE DOW公式サイト

インターネット証券で米国株取引ができるのは、マネックス証券SBI証券楽天証券の3社です。今回はSBI証券で購入する前提で調査しています。

売買手数料

売買手数料は以下のとおりです。

最低手数料: 5ドル ⇒ 0ドル(2019年7月)
手数料体系: 約定金額の0.45%
最低手数料: 20ドル

為替手数料と外貨決済対応

米国株の場合は、買いの時の日本円から米ドル、売りの時の米ドルから日本円に両替するときにそれぞれ片道25銭の為替手数料がかかります。

今回は、(計算が面倒なので)為替手数料は無視して計算しています。

米国版の『ダウの犬』をSBI証券で購入する場合

60万円の元手を使って、米国版の『ダウの犬』をSBI証券で購入する場合の購入銘柄毎の購入数量と手数料を計算してみました。
レートを110円/ドルとして、5454.5ドルの元手として計算しています。

コード 銘柄名 株価 配当率 購入株数 購入金額 旧手数料 新手数料
IBM International Business Machines 134.32 4.82% 4 537.28 5 2.42
XOM ExxonMobil 75.91 4.58% 7 531.37 5 2.39
VZ Verizon 58.09 4.15% 9 522.81 5 2.35
CVX Chevron 120.52 3.95% 4 482.08 5 2.17
PFE Pfizer 41.47 3.47% 13 539.11 5 2.43
KO Coca-Cola 49.2 3.25% 11 541.2 5 2.44
JPM JP Morgan Chase 110.77 2.89% 4 443.08 5 1.99
PG Procter & Gamble 107.45 2.78% 5 537.25 5 2.42
CSCO Cisco Systems 56.35 2.48% 9 507.15 5 2.28
MRK Merck 78.72 2.79% 6 472.32 5 2.13

米国株の場合は1株単位での購入が可能です。

合計購入金額は5,113.65ドル、旧手数料率だと購入手数料は50ドルかかり0.98%でしたが、新手数料では23.01ドルとなり0.45%となります。
60万の元手で購入しようとすると、旧手数料率だと全ての銘柄で最低手数料5ドルがかかってしまいましたが、最低手数料撤廃後の新手数料では、0.45%ですみます。現在のインデックス型投信と比較すると、1%近い手数料は割高には変わりませんが以前に比べるとかなり買いやすくなっています。

ちなみに、元手を100万づつ800万まで増やしていった時の今の銘柄・株価での手数料は以下のとおりです。

金額(円) 旧手数料率 新手数料
60万 0.98% 0.45%
100万 0.58% 0.45%
200万 0.45% 0.45%
300万 0.45% 0.45%
400万 0.45% 0.45%
500万 0.44% 0.44%
600万 0.37% 0.37%
700万 0.32% 0.32%
800万 0.28% 0.28%

400万の元手までであれば、手数料率は一律0.45%となりますね。
低コストのインデックス投信並の手数料には800万程度必要となります。そんなに元手があれば、何も必死にシミュレーションしないでしょうに。

米国版の『ダウの子犬』をSBI証券で購入する場合

同じように60万円の元手を使って、米国版の『ダウの子犬』をSBI証券で購入する場合の購入銘柄毎の購入数量と手数料を計算してみました。
レートを110円/ドルとして、5454.5ドルの元手として計算しています。

コード 銘柄名 株価 配当率 購入株数 購入金額 旧手数料 新手数料
PFE Pfizer 41.47 3.47% 26 1078.22 5 4.85
KO Coca-Cola 49.2 3.25% 22 1082.4 5 4.87
CSCO Cisco Systems 56.35 2.48% 19 1070.65 5 4.82
VZ Verizon 58.09 4.15% 18 1045.62 5 4.71
XOM ExxonMobil 75.91 4.58% 14 1062.74 5 4.78

合計購入金額は5,339.63ドル、旧手数料率だと購入手数料は25ドルかかり0.47%でしたが、新手数料では24.03ドルとなり0.45%となります。

60万の元手で購入しようとすると、旧手数料率だと全ての銘柄で最低手数料5ドルがかかってしまいましたが、最低手数料撤廃後の新手数料では、0.45%ですみます。全ての銘柄で最低手数料が0.45%かかっているのは、『ダウの犬』と同じですが、購入する銘柄が半分の5銘柄になるので、購入手数料の合計も半分で済みます。

ちなみに、元手を100万づつ800万まで増やしていった時の今の銘柄・株価での手数料は以下のとおりです。

金額(円) 旧手数料率 新手数料
60万 0.47% 0.45%
100万 0.45% 0.45%
200万 0.45% 0.45%
300万 0.37% 0.37%
400万 0.28% 0.28%
500万 0.22% 0.22%
600万 0.18% 0.18%
700万 0.16% 0.16%
800万 0.14% 0.14%

最低手数料を撤廃する前は元手が少ない時は、『ダウの子犬』を選ぶメリットがあったのですが、『ダウの子犬』と『ダウの犬』のどちらも手数料は0.45%となったのでリスク分散を考えれば元手が少ないときも『ダウの犬』を選ぶ方が良いですね。

日本版の『ダウの犬』『ダウの子犬』の比較

2019年5月17日時点の『ダウの犬』『ダウの子犬』をピックアップする際は、以下のサイトを利用しています。
「株探 | TOPIXコア30関連が株式テーマの銘柄一覧」

米国株は1株単位で売買できますが、日本株の場合は売買する際の単位株というものがあり、単元株数は通常100株です。

100株単位での購入となると、かなりの元手が要りますし、『ダウの犬手法』では、ピックアップした10銘柄、全て同じ金額で購入というのが基本ですが、100株単位だとバラつきが大きくなってしまいます。

オンライン証券のなかでミニ株で購入できるのはマネックス証券SBI証券カブドットコム証券の3社になります。
今回はSBI証券で購入する前提で調査しています。

売買手数料

売買手数料は以下のとおりです。

名称: S株
売買単位: 1株単位
手数料: 約定代金×0.5%(税抜)、最低手数料は50円(税抜)

日本株の単元株数の手数料: 90円(10万円)、105円(20万円)、250円(50万円)、582円(150万円)

日本版の『ダウの犬』をSBI証券で購入する場合

60万円の元手を使って、日本版の『ダウの犬』をSBI証券で購入する場合の購入銘柄毎の単位株とミニ株それぞれの購入数量と手数料を計算してみました。

コード 銘柄名 株価 配当率 購入株数 単位株数 単位株購入金額 単位株手数料 ミニ株数 ミニ株購入金額 ミニ株手数料
2914 JT 2,517 6.12% 23 0 0 0 23 57,891 289 5
8306 三菱UFJ 502 4.98% 119 1 50,200 90 19 9,538 50 5
9437 NTTドコモ 2,458 4.88% 24 0 0 0 24 58,980 295 5
8316 三井住友FG 3,830 4.70% 15 0 0 0 15 57,450 287 5
8031 三井物 1,704 4.69% 35 0 0 0 35 59,640 298 5
4502 武田 3,849 4.68% 15 0 0 0 15 57,735 289

8411 みずほFG 161 4.66% 372 3 48,300 50 72 11,592 58 5
8766 東京海上 5,588 4.47% 10 0 0 0 10 55,880 279 5
8058 三菱商 2,934 4.26% 20 0 0 0 20 58,680 293 5
9433 KDDI 2,753 4.00% 21 0 0 0 21 57,813 289 5

合計購入金額は583,699円、購入手数料は2,568 円となるので、手数料率は0.44%となります。
60万の元手では単位株は三菱UFJとみずほFGの2社しか買えず、ほとんどがミニ株となるので手数料が高くなります。

ちなみに、元手を100万づつ800万まで増やしていった時の今の銘柄・株価での手数料は以下のとおりです。

金額(円) 手数料率
60万 0.44%
100万 0.45%
200万 0.39%
300万 0.26%
400万 0.19%
500万 0.21%
600万 0.14%
700万 0.17%
800万 0.13%

元手を増やしていくと単位株が買える割合が上がっていくので手数料率は減りますが、端数分のミニ株の数量によっては手数料が高くなりますので、実際に買うときはミニ株分を切り上げたり、切り下げたりしたほうが良いですね。

60万や100万の手数料率でも『ダウの犬』で10社買っても良いように思いますし、リスク分散する額でも無いともいえるので、『ダウの子犬』で5社に絞ってもよさそうです。

日本版の『ダウの子犬』をSBI証券で購入する場合

同じように60万円の元手を使って、日本版の『ダウの子犬』をSBI証券で購入する場合の購入銘柄毎の購入数量と手数料を計算してみました。

8411 みずほFG 161 4.66% 745 7 112,700 105 45 7,245 50
8306 三菱UFJ 502 4.98% 239 2 100,400 105 39 19,578 98
8031 三井物 1,704 4.69% 70 0 0 0 70 119,280 596
9437 NTTドコモ 2,458 4.88% 48 0 0 0 48 117,960 590
2914 JT 2,517 6.12% 47 0 0 0 47 118,299 591

合計購入金額は595,462 円、購入手数料は2,136 円となるので、手数料率は0.36%となります。
60万の元手では単位株は三菱UFJとみずほFGの2社しか買えないというのは『ダウの犬』と同じですが、5社しか買わないので手数料が安くなります。

ちなみに、元手を100万づつ800万まで増やしていった時の今の銘柄・株価での手数料は以下のとおりです。

金額(円) 手数料率
60万 0.36%
100万 0.28%
200万 0.17%
300万 0.13%
400万 0.10%
500万 0.09%
600万 0.09%
700万 0.07%
800万 0.06%

『ダウの犬』と比べると随分と割安になります。米・日どちらも手数料は購入者数分に比例して増えていくので当たり前は当たり前です。

『ダウの犬銘柄』まとめ

『ダウの犬手法』は、過去の実績で見ても、一般的にダウ平均株価よりパフォーマンスが優れていて、アメリカではおすすめ投資手法のひとつとなっています。

このように投資プロセスが単純で確立されているものは安心感がありますね。

『ダウの犬手法』を使って、米国のダウ工業株30種と日本のTOPIX core30から『ダウの犬』10社と『ダウの子犬』5社とを購入する場合の手数料を、元手の金額を変えてシミュレーションしてみました。どちらもSBI証券で購入することを想定しています。

手数料の安さで考えると、以下の順で高くなっていきます。

①日本株『ダウの子犬』5社
②日本株『ダウの犬』10社
③米国株『ダウの子犬』5社
④米国株『ダウの犬』10社

リスク分散の考え方や米国と日本の市場性にもよるので、一概には言えませんが、元手が少なくても、②日本株『ダウの犬』10社+④米国株『ダウの犬』10社ではじめ、投資先数は20社のままで徐々に金額をアップしていくのがよさそうです。

また、配当金には税金がかかることも考慮して判断しないといけません。日本株は20%、米国株は米国で10%、日本で20%課税されます。キャピタルゲイン狙いと違ってインカムゲインの場合は課税分が重くのしかかってくることを考慮して判断しましょう。

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